Netflixのバイオハザードについて。
私はすごくすごく面白くて次回作もとても楽しみにしていたのですが、どうやら不評だったらしく、つまらない、というまとめ記事ばかりで腹立たしかったので、最高だった!という文章を私が書くことにしました。
まず全てに反論したいのですが、不評の原因は主に
・人気白人キャラクターが黒人だった
・世界観が違う
・主人公に共感出来ない
あたりのようです。
もう!
私はNetflixのバイオハザードにすごく緻密な設計を読み取ったので、表面的な評価にがっかりです。
あと凄く女性が見た方が面白く感じる様にも思えました。(シーハルク的な)男性ファンの多いバイオハザードに於いて、そこが評価が分かれてしまった原因な気がしてしまい、余計に物悲しく感じています。
色々説明しますが、完全にネタバレなので、ちゃんと見たい人は読まないで下さい。
因みに、私は目を逸らしてたのですが、ネズミに酷いことするシーンがあるのでネズミちゃん大切な方は見ない事をおすすめします。
まずゾンビパンデミック後の世界と、崩壊寸前のまだ平和な世界の、2つの時間軸で物語が進むという面白い構成。
時間は違いますがメインはある姉妹で、学生時代と成長後の話が同時進行します。
時代が違うのに意味合いや関係性がリンクしていたり、対比になっていたり、敵味方が入れ替わっていたり、予想を裏切る、他では見ない感じの面白い作りになっています。(他であったらすいません)
そしてこの作品はアンブレラ側を描いた作品だと言う点が重要です。
お金の為、政府の軍のため、家族を養うため…今迄そんな感じだったアンブレラ化学の目的が今回もう一度洗い直されてるように思います。
それは純粋な科学の探究であったり、世の中のシステムを私が作り変えたい、みたいな、政治的というよりかなり純粋で個人的な「欲望」が原動力になっていて、これはもう目的を阻止するとか、説得するとかの次元ではないのが、何故かすごい好感が持てました。好感?
だって科学欲求はその時止めてもきっと違う誰かがやるだろうし…これはもう人類の臨界点超えたタイミングなんだな…と思えたからです。これは地球を何十回だか破壊できる核爆弾を抱えてる現実世界で生きているのと同じくらいリアルでホラー。
人気金髪白人の悪役ウェスカーが黒人だったのが不評の一因らしいですが、本当にちゃんと最後まで見た!?と私は言いたい。
まずこのNetflixバイオハザードには沢山の伏線とミスリードが繊細に、緻密に織り混ぜられています。
それは例えばゲームで助けてくれるキャラクターと同名の人物が既にゾンビ化してるとか、レズビアンのカップルだと思ってたら子供がいるとか。
こうなる筈…がことごとく一捻りして面白く裏切られる。
ウェスカーも、本来企業のトップに君臨しているのに、唯の研究員だったりして、子供もいたりして。そこでバイオファンは「あれ?」「結婚もしてるの?」みたいになるんだけど、ここが傲慢な科学者ウェスカーとして最高な設定の伏線になっている訳です。
冷徹ウェスカーはもうかなりウェスカーだった。肌の色とかじゃないでしょあの意味わかんなさはウェスカー。
そして主人公のウェスカーの娘設定が「何を危険に晒しても科学を追求してしまう」という性質が遺伝してしまっているわくわく感と絶望感。あの善悪どちらに転ぶか曖昧なバランスがすごく良かったです。
そして私は主人公姉妹がすごい好き。
他のレビューで共感できない女主人公って書いてあったんですが、そういう人はもうNetflix向いてないよ、と思ってしまいました、すいません。
虐められても暴力で抵抗しない、ベジタリアンな平和主義者な妹が、ウィルスで暴力性が制御できなかったり、生き物を食べたくて仕方なくなってしまうのが、どれほどの絶望か。これが想像できたらすごい面白いと思う。そりゃ人格も変わるわー、って思えたら色々納得できると思う。
ここに共感できなかったら「なんで?」ってなるのかと思います。そこで面白い人、つまんない人に分かれてしまったのではないでしょうか。
また設定の小技がすごく繊細で丁寧にバイオハザードの世界を再構築していると感じました。
例えば黒人の主人公の女性が何ヶ月かぶりにシャワーを浴びれるシーン。黒人の編み込んだ髪を流すと、シャワーの水が血で真っ赤に染まっていくんだけど、これは市街地でゾンビと死闘を繰り広げてたらそりゃ血まみれだよねっていう「ゾンビ世界をリアルに再認識」できるシーンです。
しかもこれはサラサラブロンドの主人公ではできない演出。
このシーンの為だけでも黒人の女の子主人公で良かったと思えました。
あと、すごく重要だと感じたのが悪役に女性を沢山充てたところ。
まずこのストーリーには生物学的な母親が一切出てきません。
バイオハザードには沢山の小説(アガサクリスティーとかドストエフスキーとか)のオマージュが織り混ぜられているのですが、生物学的な母の不在は完全に「フランケンシュタイン博士」のオマージュです。
フランケンシュタイン博士はそもそも「男性だけで子供を作ったらどうなるか」というテーマが隠された女性作家の小説作品です。これがNetflixバイオハザードでは母無しで「科学で子供を作ったら」(つまり女性でもフランケンシュタイン構造は成り立つ)という新解釈をしている訳です。
どうしてもアクションムービーは戦闘シーンが男性的になりがちな所を、女性の悪役にして、時に秩序立てて、時に「魔笛」を歌うソプラノの歌声に乗せて、優雅に効率よく殺戮のかぎりを尽くすのは爽快感があります。
無意識に男性的なごりごり肉弾戦戦闘シーンを求めている人だと、優雅さとかより、嘘くさい、あっさりゾンビ倒しすぎ、と思うかもしれません。
私はすごい好きだし、従来の画一化され過ぎてる戦闘ムービーに飽き飽きしていたのですごい嬉しかったのですが。
また、次回作は作らない事に決定してしまっている様ですごく悲しいのですが、どうやらドミトレスク婦人も出したかったらしいんですよね。
正直ドミトレスク婦人を出したくて、悪役に女性を沢山据えたんじゃないかと思えたので、とてもとても残念です。
凶暴な女性悪役を沢山見たいんだ私は…。
追記
主人公妹ちゃんが幼少期ビリーアイリッシュ似なのに成長すると韓国人の骨格になるのは納得いかない。アジア人への理解が弱い。そこだけ